教員インタビュー
関西大学の
オンライン授業化への取り組みと、
2つの実践例をご紹介します。

全面オンライン授業化
にあたって

非常時であっても
質の高い授業を

2020年、新型コロナウイルス感染症の流行により全国の大学が「オンライン授業」への切り替えを余儀なくされました。これまで経験のない急激な教育スタイルの変化に、多くの大学や教員が戸惑いを隠せない中、関西大学は4月20日という全国的に見ても非常に早い時期に全面オンライン授業実施を実現しました。その原動力を探ります。

関西大学 教育推進部 
山本 敏幸 教授

専門は教育工学、e-ラーニング。教育の場におけるICT技術の活用、教育力向上の取り組み(FD)などをテーマに実践的な研究を行っている。
今回のオンライン授業化にあたっては、「教員と職員が共に知恵を出し合ったから乗り切れた」と振り返る。

学びを止めないために
早期のオンライン
授業化をめざす
この春に直面したオンライン授業化の取り組みは、災害時や非常時の取り組みに他なりません。3月の時点では、多くの教員がオンライン授業を行う心の準備ができておらず、ICTツールの操作に対する不安を残した状況でした。しかし、学生の学びの機会を担保するために、春学期に開講される5,000科目以上の授業をオンライン化する必要に迫られたのです。そこで関西大学全体の教育活動を支援する教育開発支援センターは、オンライン環境の整備を急ぐとともに、教員の授業展開を支援する取り組みを続けてきました。
教員同士のつながりが
生まれ、オンライン化を
達成できた
教員への支援としては、4月1日に行ったLMS(ラーニング・マネジメントシステム)の利用についてのFD相談会を皮切りに、まずオンライン授業に対する不安の払しょくに努めました。その後、教員対象のアンケートを実施して、寄せられた具体的な質問(録画配信の仕方、著作権の問題など)について、事務職員がQ&A集や操作マニュアルを作成。オンライン授業がスタートした4月20日からは、初級・初心者コースと中級コースに分けてFD相談会を継続して実施してきました。教育開発支援センターの教職員数名だけで、総勢2,000名を超える教員を十分にサポートすることは到底不可能でしたが、教員同士が互いに知恵を出し合い、自発的に授業展開のノウハウ共有を行った結果、3,000科目以上の授業でオンライン化が達成されました。
学生の目線に立った
ケアと情報発信が必要
今回のコロナ対策によるオンライン授業化を通して得た教訓が二つあります。一つ目は、今回のような非常事態が再び訪れた時に備え、非常時を想定した教育体制を準備することです。これまでの対面型授業で培ってきた教育の仕組みは、非常時においてうまく機能しませんでした。ただその一方で、対面授業の経験しかなかった教員の間に、ICTを活用した形でも教育の質向上の工夫ができるのではないかという意識が芽生えたことは、今後を考える上で非常に大きな収穫だと感じています。二つ目は、学生の心のケアを置き去りにしないことです。非常時の授業形態だと頭では分かっていても、新入生にとっては授業の実感が伴わず、教員や学生とのつながりを感じにくいでしょう。就職活動中の学生にとっては、ちゃんと卒業できるのだろうかという不安が付きまといます。こうした悩みを軽減するため、関西大学では6月上旬から、職員と学生サポーターによる「なんでもオンライン相談」をスタートしました。学生の目線に立って、学生の未来を考慮した情報発信をタイムリーに行うことが欠かせないと考えます。

DATA

オンライン授業を関大生は
どう受けとめたか

関西大学では、全ての学生が"関大LMS"を活用して「オンライン授業」を受講しました。具体的には、Web会議システム(Zoomなど)を活用してリアルタイムで行う授業やオンデマンド配信される動画で学ぶ授業を自宅で学習しました。なかにはグループワークや小テストもオンライン上で行われました。
7月に実施したアンケート※では、オンライン授業に「意欲的に参加している」と回答した割合は形態別に下のグラフのような結果に。オンライン授業のメリットとして「自分のペースで学習できる」「復習が何度もできる」を挙げる学生が多く、関大生が自分自身で効果的に学習目標を達成するスタイルを実践して、自律的に学習する姿がみられました。

リアルタイム遠隔授業64.7%/オンデマンド配信授業61.3%/教材提示による授業49.2%
職員からのコメント

全国的にも早い時期にオンライン授業を開始できました。これは学内の各部署が「学びを止めない」という意思を共有し、スピード感をもって対応したことで実現できたと考えます。

教育開発支援室
土井 健嗣

オンライン授業実践

オンライン授業の実施例
オンラインでも
「知」に触れる
楽しさは変わらない

学びの臨場感を生み、学生の主体的な
授業参加を促す実践例をご紹介します。

共通教養科目
「ことばと思考」
文学部 三村 尚彦 教授

講義本編と質問回答編の
2本立てで動画を配信
オンライン授業を行うにあたって意識したのは、「対面形式の授業にできるだけ近づける」ということです。試行錯誤した上で、要点をまとめたスライドを画面に埋め込み、その内容について身振りを交えながら板書を行う動画を配信する形に落ち着きました。さらに、前週の講義に対する質問に答える30分程度の<質問回答編>動画も作成し、2本立てで配信しています。学生が「これはこういうことですか?」と自分の言葉で発した質問に、なるべく多く答えることで、理解度を高めることがねらいです。
すべてを解説しないことで、
学生自身が考える
余地を作る
この「ことばと思考」という講義は、「考えること」そのものを学生自身に考察してもらう授業です。そのため、スライド上ですべてを解説することはあえてしません。学生は私が具体的な例を挙げて説明するのを聞き、さらに板書で補足するプロセスを見ることで、はじめて理解できるように授業を設計しています。大学の授業は(対面でもオンラインでも変わりませんが)、単に知識を覚える場ではなく、学生自身が新たな知の世界に触れ、そこからさらに考えを深める楽しさに満ちています。学生達には、難しい、わからないと感じた時には動画を一時停止して、じっくり考えてほしいと伝えています。
オンライン授業実施のポイント
スライド資料を見せるだけでなく、説明(話す)と板書(書く)を並行する
膝から上を映して身振りを交えることで、映像に動きをつける

三村先生のオンライン授業をのぞいてみよう!

受講生の声

  • この講義で、考えるおもしろさを知って哲学に関する本を買いました。
  • 難しい内容ですが、自分の言葉で言い換えてみると腑に落ちます。
  • いつも続きが気になるところで終わるので、次回の授業が楽しみです!

オンライン+対面授業の実施例
オンライン講義を
経て実現した
新たな実習の形

さまざまな制約を乗り越えて、
対面授業を実現した事例をご紹介します。

システム理工学部 機械工学科
「工作実習」
廣岡 大祐 准教授

実習を再開できる日に
向けてオンライン講義で
知識を補完
この「工作実習」は、学生に「実際の機械に触れ、実加工を行う」ことを経験してもらう、機械工学科の必修科目です。例年は約60名を実習工場に集め、旋盤やフライスなどを使った金属加工を行っていました。しかし、4月上旬にキャンパスへの入構禁止が決まり、通常のカリキュラムでの実施が不可能になりました。先の見通しが立たない状態でしたが、キャンパスに再び集まれる日に向けて、金属加工の理論的な理解と、機械の操作方法を説明するオンライン講義の配信を続けました。
時間と空間が
制限された状況でも
学びの質を
落とさないために
一部科目において対面授業を再開できるようになった6月中旬からは、「3つの密」を避けながら実習を行うための準備をスタート。学科の教員と技術サポートの職員で知恵を絞りました。まずは各学生の授業開始時刻を複数に分け、同時に実習工場で受講する人数を通常時の4分の1まで減らしました。また、学生1人あたりの滞在時間が3分の1程度になるよう、実習内容を大幅に変更しました。具体的には、加工材料を鉄から削りやすいアルミに変更することで、加工の工程を例年同様に指導しながら、作業時間を大幅に短縮することができました。また、参加学生は1人1台の機械操作を体験する形となり、通常時よりも高い教育効果が得られたと思います。
対面授業実施のポイント
オンライン講義で理論面と機械の操作方法をレクチャーし、実習では体験を重視
消毒、マスク着用、洗浄済み保護メガネの着用など、安全対策を徹底

受講生の声

  • 金属の質量を感じながら、モノを作るプロセスを実感できた。
  • 人数制限のおかげで、1人ずつじっくり指導してもらえた。
  • オンラインで予習してきた機械操作を、実際に行えたことがうれしい。